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【体験談】「親の幸せな最期」を叶えた終活と在宅介護の実例

昨年の秋、私(45歳)の父(75歳)が肺がんと診断され、「あと半年から1年」という厳しい宣告を受けました。最初はどう受け止めていいのかわからず、ただただ時間が止まったようでした。
けれども、父自身が「残された時間を楽しく、悔いなく過ごしたい」とはっきり口にしたことが、家族みんなで前を向くきっかけになったのです。
ここでは、私たち家族が体験した終活や在宅介護の取り組みをご紹介します。

1. 父の“ひと言”をキャッチする大切さ

父は昔から無口で、あまり本音を言わないタイプでした。ですが、病気になってから、ふとした瞬間に「この人、元気かな…?」とつぶやいたり、「ここに行きたかったな」と漏らしたりすることが増えました。
最初のうちは曖昧に受け流していましたが、思い切って「会いたいの?」「行ってみようか?」と尋ねると、父は少し照れながらも本音を打ち明けてくれたのです。

昔の友人に会いたい

父の幼馴染と連絡を取り、数年ぶりに再会。短時間でしたが、昔の話に花を咲かせ、父はとても嬉しそうでした。

釣りに行きたい

近場の釣りスポットを家族で調べ、日帰りでも気軽に行けるプランを考えました。簡易チェアを持ち込めば、体力が落ちた父でも無理のない範囲で釣りを楽しめたのです。

こうした小さな希望を叶えるたび、父の気持ちも前向きになり、家族としても「やってよかった」と心から思えました。

2. 「在宅医療」と「要介護認定」で家族の負担を減らす

父は75歳、母は73歳で、二人暮らしをしていました。私は車で30分ほどの距離に住んでいます。
最初は「病院にずっと入院させるべきか」「家で看取るべきか」迷いましたが、父が「家で過ごしたい」と強く希望したため、在宅医療と介護サービスを利用する道を選びました。

要介護認定の申請

市役所に相談し、要介護認定の手続きを行いました。認定結果に応じて利用できるサービスや費用負担が変わるため、まずはここから始めることがとても重要です。
父の場合、要介護3の判定を受け、介護保険サービスの負担割合は1割で済みました。

訪問看護と訪問介護の導入

訪問看護

週2回、看護師さんに来てもらい、父のバイタルチェックや簡単な医療処置をしていただきました。必要があれば医師との連携もスムーズで安心感があります。

訪問介護

こちらも週2回、ヘルパーさんに来てもらい、入浴や食事のサポートをしてもらいました。
母の負担が大幅に軽減されただけでなく、専門的な知識を持つ方と話すことで、私たち家族も介護に対する不安が減っていきました。

生活環境の整備

リビングにベッドを移し、ポータブルトイレや手すりを設置するなど、安全に移動・排泄できるよう家の中を改造しました。
こうした設備費用は、介護保険の住宅改修制度を活用し、一部助成を受けることができました。

3. 仕事と介護を両立するための工夫

父の在宅介護が始まった当初、私は週5日フルタイムで働いていました。突然の介護との両立は不安ばかりでしたが、以下の取り組みでなんとか乗り切っています。

1. 介護休暇や在宅勤務の活用

勤務先に事情を説明し、介護休暇や在宅勤務制度を活用。病院への付き添いや父の体調が不安定な日に対応しやすくなりました。

2. 仕事を“息抜き”と割り切る

介護はどうしても精神的・肉体的に疲れがたまります。意識的に出社したり外で働く時間をつくることで、自分の気持ちをリセットするようにしました。
仕事仲間と会話をするだけでも、気分転換になります。

3. 職場への理解と連携

上司や同僚に現状を伝え、こまめに相談することで、急な休みや時間短縮勤務にも柔軟に対応してもらえました。
将来のキャリアのことを考えても、早めに情報を共有して理解を得ることが大切だと感じます。

4. 介護費用と経済面へのリアルな対策

医療費の負担を抑える制度

父は肺がん治療のため抗がん剤を使うこともありましたが、日本の医療保険制度には高額療養費制度があり、一定額を超えた分は払い戻されます。
例えば、70歳以上の一般所得者の場合、医療費の自己負担上限は月に約5万7千円ほど(※収入や条件により異なる)になります。これだけでも、大きな負担軽減に繋がりました。

介護保険による費用軽減

要介護3の判定を受けていた父の場合、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの自己負担は1割でした。
実際には1か月あたり3万~4万円程度で済み、もし民間サービスをフルで使っていたらもっと高額になっていたと思うと、公的支援のありがたさを痛感しました。

将来を見据えた家計管理

母の生活費の見直し

父の闘病中から、母が一人になった後も無理なく暮らせるように、家計簿をつけて固定費や日常の出費を整理しました。

遺言書や相続の準備

病気が進行する前に、父と母、私たち子どもも交えて、公正証書遺言の作成を検討。専門家に相談することで、トラブルを防ぎ安心して準備を進められました。

5. 親との「小さな目標」を大切にする

父は亡くなる数週間前まで、「もう一度、孫の運動会を見に行きたかったな」「庭で花を見ながらお茶したい」といった小さな願いをよく口にしていました。私たちは可能な範囲で叶えようとしました。

  • 庭づくりが好きだった父には、リビングの窓から見える花壇を一緒に手入れ。土の感触や花の香りに触れているときの父は、やはり生き生きしていました。
  • 孫の行事には体力的に難しい場面もありましたが、スマホの動画や写真で一緒に楽しむ工夫をするだけでも、父は笑顔を見せてくれました。

6. 旅立ちの瞬間と母のこれから

父は先月、静かに息を引き取りました。最期まで「幸せだった」と言い残し、穏やかな表情で逝った姿は、今でも私たち家族の心を支えてくれています。

一方、残された母(73歳)も寂しさはあるものの、家族みんなで支え合いながら日常を取り戻しつつあります。
父との思い出を語り合い、これからの暮らしをどうしていくかを一緒に考える時間が、母にとっても大きな支えになっているようです。

7. 同世代へのメッセージ:仕事と介護、両立の先に見えるもの

40代は子どもの教育費や自分の仕事のキャリア形成など、なにかと忙しい時期です。そのなかで、親の介護が突如訪れると大きな負担を感じるかもしれません。
ですが、次のようなポイントを押さえるだけで、ずいぶん違ってくると実感しています。

1. 親の言葉を否定しない

「会いたい」「行きたい」といった何気ないひと言を大切にして、親の希望をキャッチしてあげてください。

2. 要介護認定と介護サービスの積極活用

プロの手を借りることで、親に最適なケアを提供でき、家族の負担も和らぎます。

3. 仕事との両立を前提に考える

介護休暇や在宅勤務だけでなく、外で働く時間を意識的に取り入れることも、心の余裕を保つ大切な方法です。

4. 経済面と将来設計の話し合い

高額療養費制度や介護保険で負担を抑えつつ、相続や遺言書などの準備を早めに行うと安心です。

親との最期の時間をどう過ごすかは、その後の人生にも大きな影響を与えます。
私の場合、父と過ごした日々がかけがえのない思い出となり、自分自身のこれからの生き方や価値観にも変化をもたらしました。もし、今まさに「親の介護」や「終活」について悩んでいる方がいらっしゃれば、どうか一人で抱え込まず、家族や専門家に力を借りてみてください。
その選択が、親にとっても自分にとっても、最善の道へつながるのだと私は信じています。

株式会社FPオフィス縁(えん)

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